
WORLDS / 藤崎竜
封神演義や屍鬼などの漫画で知られる藤崎竜の初期作品を集めた短編集WORLDSを読んだ。
今ではその独特のタッチと世界観を確立している作者だが、この短編集ではまだまだ荒削りで自分の道を模索している様子が窺い知ることができる。
正直な感想を言えばストーリーの展開はかなり無理矢理。
作品のテーマ『自分の生きているこの世界は夢なのではないか』『人間が管理される社会』など面白くはあるのだが説得力にかけている。
だが繊細な絵のタッチと奇抜なテーマにも臆することなく描く姿勢は今でも根っこの部分に宿っているのだろう。
現在の藤崎竜の作品を見ればそれがよくわかる。
屍鬼は小野不由美の小説を原作とした作品だが、この作品は小説自体がとんでもない。
この作品自体が化け物のようなモノであるのに藤崎竜は独自の世界観に引き込み描ききっている。
キャラクターは藤崎竜らしいタッチで描き舞台となる外場村はリアリティある絵で描いており、絵のバラエティもかなり広いようだ。
ストーリーも原作に忠実に描いているが、原作を壊さないように自分なりの展開も見せている。
WORLDSは作品自体は決して良くできているものではないが、藤崎竜が漫画の世界に進む一歩となった作品である。
荒削りだが原石としての輝きを持っており惹かれる要素の多い作品であった。
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