
「ひゃくはち」
監督:森義隆
プロデューサー:木滝和幸
原作:早見和真
脚本:森義隆
撮影:上野彰吾
出演:斎藤嘉樹、中村蒼、市川由衣、高良健吾、北条隆博、桐谷健太、三津谷葉子、有末麻祐子、橋本一郎、太賀、小松政夫、二階堂智、光石研、竹内力
人間には108つの煩悩があるのだという。除夜の鐘で108つの鐘を叩くのは、その煩悩を1つ1つ叩いて清めていくらしい。
そして、野球で使われる硬式球の縫い後も108つあるようだ。
「ひゃくはち」は煩悩に塗れた高校球児がレギュラーになるために奮闘するというストーリーである。
甲子園でも上位に食い込む超名門高校のくせに女にタバコ、酒と高校球児どころか高校生としてもあるまじき行為を平気で行なっている。(昔からタバコも酒もする高校生はいるだろうが、それでも一応あるまじき行為である。)
やはり高校生がタバコを吸うという描写は問題視されているようだ。
監督からしてみたらプロにスカウトされるような有名球児たちもタバコや酒をするような高校生と変わりはない。実際そういう問題が起こっているのだから、それをあるがままに描きたかったのではないのかな。
それを抜かしたとしても、やはりこの映画で描かれる姿は高校球児の姿とは違った。
つい最近、夏の甲子園大会では沖縄、興南高校が優勝したが、テレビで見る高校球児の姿はそこにバックグラウンドが存在していないとはいっても、その身体に顔つきからも野球に高校生活を賭けてきた一所懸命さが伝わってくる。
しかし本作ではバックグラウンドが描かれているにも関わらず、高校球児らしさを感じないのだ。
強豪高校という設定も多少のショットと言葉でしか語られない。
そんな設定で描かれる主人公2人の描写にはやはり違和感しか感じない。
今まで練習メニューはこなしているものの、楽にこなす方法を見つけたのではないか? というように見え、ポジションが空いているときにだけ頑張る。そんなふうにしか見えない。
後半で2人は1つのポジションを狙い、それまでの友情が一転して争うかたちとなるが、頑張っていたのはそこだけなのである。
それまで頑張ってきた過程が面白いくらい見えないのだ。
そんな高校球児の姿も一面的には面白いのだが、甲子園に向けてレギュラー争いをする高校球児の姿としてはまったく心は動かなかった。
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