
「神様のパズル」
機本伸司 著
宇宙は作れるのか?
それは人間が神の領域に触れることだ。怖ろしい所業のように思える。
だが、そこにはロマンもあるんだよね。
「神様のパズル」はそんな「宇宙は作れるか?」という問題をテーマに進展していく青春ドラマだ。
物理学なんてまったくわからないのだが、それでもやはり惹かれてしまうのは宇宙がとても身近な存在だからかもしれない。
夜になって空を見上げれば数え切れないほどの星があり、それを黒いカーテンが覆うように広がっている。
宇宙はどうなっているのだろうか? どうやってできたのだろうか?
こういう問いは誰もが感じるとても純粋な問いなのだろう。
本作で引き合いに出される物理学の専門的な言葉はまったくわからなくてもどかしかったのだが、でも本作を読めば物理学を勉強したい! という知欲が湧いてくるはずだ。
そのくらい魅力的な世界が広がっているのだから。
ただ残念なのは主人公である綿貫基一とヒロインである穂瑞沙羅華以外に7人ほどの登場人物が出てくるのだが、必要だと思える人物が3人ほどしかいない。それ以外は必要と言えるほどでもなく、この場面でこのセリフを言うためだけにいる人物だと思えてしまうのだ。そのため人物に奥行きを感じないのである。
それが唯一残念な点だった。
それ以外ではテーマもアイデアも面白く、青春小説らしい作品で十分に楽しめた。
しかし、主人公である綿貫基一の扱いには酷いと感じてしまう。ヒロインである穂瑞沙羅華もかなり酷い目にあっているのだが、最期まで報われない綿貫基一。
なぜ、ああも酷い目に遭わなければいけないのか。
読後、爽快さ以上に悲しさと切なさが勝ったのはなぜだろう…。
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