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ほとんど趣味のことを綴るブログ。

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「神様のパズル」
機本伸司 著

宇宙は作れるのか? 
それは人間が神の領域に触れることだ。怖ろしい所業のように思える。
だが、そこにはロマンもあるんだよね。

「神様のパズル」はそんな「宇宙は作れるか?」という問題をテーマに進展していく青春ドラマだ。

物理学なんてまったくわからないのだが、それでもやはり惹かれてしまうのは宇宙がとても身近な存在だからかもしれない。
夜になって空を見上げれば数え切れないほどの星があり、それを黒いカーテンが覆うように広がっている。
宇宙はどうなっているのだろうか? どうやってできたのだろうか?
こういう問いは誰もが感じるとても純粋な問いなのだろう。

本作で引き合いに出される物理学の専門的な言葉はまったくわからなくてもどかしかったのだが、でも本作を読めば物理学を勉強したい! という知欲が湧いてくるはずだ。
そのくらい魅力的な世界が広がっているのだから。

ただ残念なのは主人公である綿貫基一とヒロインである穂瑞沙羅華以外に7人ほどの登場人物が出てくるのだが、必要だと思える人物が3人ほどしかいない。それ以外は必要と言えるほどでもなく、この場面でこのセリフを言うためだけにいる人物だと思えてしまうのだ。そのため人物に奥行きを感じないのである。
それが唯一残念な点だった。

それ以外ではテーマもアイデアも面白く、青春小説らしい作品で十分に楽しめた。

しかし、主人公である綿貫基一の扱いには酷いと感じてしまう。ヒロインである穂瑞沙羅華もかなり酷い目にあっているのだが、最期まで報われない綿貫基一。
なぜ、ああも酷い目に遭わなければいけないのか。
読後、爽快さ以上に悲しさと切なさが勝ったのはなぜだろう…。

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虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター 著

とんでもない作品を読んでしまった。
「虎よ、虎よ!」を読み終えたとき、純粋にそう感じた。
1人の男の復讐劇であると同時に壮大なサーガ作品を読んだような、そんな印象を受けたからだ。

ストーリーもさることながら、さまざまなアイデアの数々が素晴らしい。
このアイデアだけで1つの作品が書けるじゃないかと言えるほど面白いアイデアの数々を出し惜しみすることなく使っている。
それを感じるのも楽しければ、深く考えてみるのも面白い。

また、タイポグラフィによるサイケデリックな文章も面白い。
サイケデリックな文章体験とはまさにこのことではないだろうか。
文章による麻薬。大仰かもしれないがそういっても過言ではないと思う。

そのくらい衝撃的な読書体験だった。

次は同じアルフレッド・ベスターの「ゴーレム100」を読もうと思っている。
こちらは「虎よ、虎よ!」以上に期待している作品なため楽しみだ。


All You Need Is Kill
桜坂洋 著

舞台は未来の日本。人間はギタイと呼ばれる謎の生物との戦いに明け暮れている。
日本の部隊に所属し、初めて出撃するキリヤ・ケイジは初めての出撃で命を落とす。
だが、気が付くと前日に戻っていた。
あまりにもリアルな夢かとそのときは思うことにするが、その日からキリヤ・ケイジは死ぬたびに前日に戻るということを繰り返すことになる。
キリヤ・ケイジはループされる世界から、まだ見ぬ明日へと抜け出すために模索していく。

SFアクションものでありながら、バックグラウンドを深く掘り下げない設定とループされる日常を抜け出すというシンプルなストーリーが功を奏したのか、なかなかよくできたライトノベルだった。
また戦争だけではなくてリタ・ヴラタスキ、戦場の牝犬(ビッチ)と称される少女との恋愛模様もあることも面白い。
ラストはループから脱出するものの希望のないラストだった。

ただ本作は1冊、それも300ページない作品というのが残念だったかもしれない。リタとキリヤの恋愛模様をもうちょっと掘り下げてくれたらラストのあの展開がもっと辛いものに見えたのにそれが感じられなかった。
それが残念である。

また文章も戦争ものでありながらラノベっぽい文章というのが気になった。
セリフや主人公の心情がどこか軽く見えてしまい、それがストーリーをもどこか軽くしているようにも見えた。

それでも昨今のいかにもラノベラノベしてる作品の中でなかなか特異な作品で、面白かった。



「知的複眼思考法」
苅谷剛彦 著

例えば学生時代、講師が物事を違った見方をしていることに憧れたことはないだろうか? そういった経験でなくてもいい。読んだ書物の著者が考えつきそうで考えつかなかった側面から物事を眺めていることに驚いたことはないだろうか。
自分はそんなことばかりだ。

「知的複眼思考法」
そう題されたこの本は単眼思考、つまり一面的な思考から複眼思考、多面的に物事を見て思考する方法を教える本だ。

多面的に物事を見たいと考える人は多いはずだ。
学問もそうだし、趣味でも必要になる場面はあるだろう。他にも社会情勢や政治を見るのには確実に必要だ。
そんな複眼思考を身につけるにはどうしたらいいのか?
自分自身で考えて見につけるなんてことは難しい。
それなりの学習が必要になるし、短い時間で身につけるなんてことは無理な話だろう。
ならば、どうしたらいいのか。
今までの学習法や思考法を全部一新して新たな思考法を身につけなければいけない。
勿論、今までの思考法でこれは使えるかもしれないというのは残しておくべきだ。それとは別にこれは使えない。本書の中でこれは使えるかもしれない。そういう思考法を積極的に使うべきだ。

本書ではそのノウハウやヒントを教えてくれる。

思考法ってものは学生時代に授業で学ぶことだったりするので、複眼思考を自分のものにするのは運が大きかったりするのではないだろうか。
よっぽどいい先生や教授なんかに出会わなければ単眼思考のままなのだろう。
ならば、やはり自分でどうにかするしかない。
この複眼思考はどうしてでも手に入れなければいけないものだと思うのだ。


「The Road(ザ・ロード)」
コーマック・マッカーシー著

核戦争か何かで崩壊した地球、文明は滅び、法や秩序もなくなった。その日、生き延びるだけの食料すら見つからない。
そんな世界で何とか生き残った数少ない人々は人間らしさを捨てて無秩序な生活を送るようになる。
そんな世界でひたすら南に向かって歩き続ける父と子。
父は子を守るためならば心が鬼になっても構わないと思っている。それが人を殺すことになろうとも…。
息子はこんな世界に生まれていながらも純粋な心を持つ少年だ。
二人は南に向かえば今よりも暖かい場所で暮らせるかもしれない。そんな思いから旅を続ける。


ストーリーはとても淡々と進んでいき淡々と終わる。
しかし、とても重厚なストーリーであるのだ。
バックグラウンドはSFであるが、これは親と子のストーリーだ。SFという設定はあくまでも設定で親子のストーリーを映えさせるためであるとわかる。
現実の世界ではなくてSFという設定だったからこそ、人間の本質や親と子の関係、親の守りたいもの、子の純粋さが際立って見えてくるのだ。

そんな世界では娯楽も何もなくて毎日、わずかな食べ物を食べてひたすら南に歩くだけ。それなのにも関わらず2人の会話がとても秀逸なのだ。
現代が舞台ならば「学校はどうだった」とか「今日は何していたんだ」なんて会話が想像できる。
だが、毎日一緒に歩き続けるだけの生活ではそんな会話すらない。そんな2人には、どんな夢を見たくらいが精々なのだ。しかし、それでも2人の会話には親子の繋がりがあることが一目でわかる。
決して口数が多いセリフが出てくるわけではない。だが、芯が通っている人間であることがよくわかるのだ。この人間たちは作られた人間たちではなくて心があって血が通っている人間だ。そんな印象を受ける。

終末世界を描いた映画や本、漫画はたくさんある。自分も数多く見てきた。
無秩序で混沌とした世界。だが、人間たちは何人か生き残っており、そんな人間たちはコミューンのようなものを作り生活している。
そんな世界が簡単に想像できるが、実際は光が黒雲によって覆われた世界のように夢も希望もなくて、ただ食べるためだけに歩き続ける。
人間らしさも捨てて生き残るためならば人間の肉さえ食べる。
そんな世界なのかもしれない。

最後まで人間としての尊厳を捨てないこの親と子には人間らしさとは何なのだろうかと考えさせられた。

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